白倉 正子さんへのリレーインタビュー

クリーンクリエイターズラボ代表 栢森 聡さんからのリレーインタビューは、アントイレプランナー代表 白倉正子さんです。

白倉さんは、知る人ぞ知る、泣く子も黙る 女性トイレ専門家です。

アントイレプランナーとは、ご自身が22歳で生み出した造語。それを今も、自分の仕事を一言で言い表す職業名として使われています。つまり職業そのものを創ってしまったわけです。
それって凄いことですね!

「トイレを変えれば、人・地域・経済・人権・環境が変わるはず!」
トイレから地球革命という理念。

「トイレの専門店をつくり、世界のトイレ問題を解決すること」
それが、白倉さんの夢、そして目標です。

「こんなに分かりやすい人は、いないでしょ?」と白倉さんは言いますが、お話をお聴きすればするほど、トイレ話が壮大で崇高なものに感じられるので不思議でたまりません。

今回はオンラインでしたが、プレゼン資料によるご説明があまりにも面白かったので、そのまま動画でご覧いただくことにしました。

どうぞご期待ください!(聞き手:昆野)


――アントイレプランナーって、凄い名称ですね?

白倉 正子さん: 起業家を意味するアントレプレナーとトイレとプランナーで、新しいトイレのビジネスを創る人という意味です。ここまでどっぷりとトイレに浸かっている人は、世界的にもあまりいないので、よく奇人変人扱いされています(早くも二人爆笑)!

――トイレにこれだけハマったきっかけは何だったんですか?

白倉 正子さん:そうですね、それではプレゼン資料でご説明した方がいいですね。


そう言って白倉さんは、数日前に長崎で講演された時の資料を画面共有し説明を始めました。

開始早々、凄いタイトルが出てきました。
私の人生は果てしなく楽しい「トイレにハマった私」(爆笑)。



立て続けに「3大」疑問です。


私はこのインタビュー記事の原稿を書きながら、このインタビューを文字だけで伝えるのはあまりにももったいないと考え、リレーインタビュー史上初めて動画を組み込んでご覧いただくことにしました。


まずは、この動画をご覧ください。
なお一部、画像処理をしていますので予めご了承ください。



いかがでしたか、みなさん(ニヤニヤ)?

さて、気を取り戻して・・・。

――ご説明をお聴きして最初に私が感じたことは、アイディアが凄いなということです。すべてトイレに関連付けて発想し続けているところに、痺れますね。

白倉 正子さん:そうですね。私の価値基準は、すべて「トイレの仕事を成功させるために、何をすればいいか?」なので悩みは減りました。

――トイレが好きという感覚が私にはなかなか分かりませんが(笑)、ビジネスの目的がはっきりしているので、軸がしっかりしていて”そもそも”という原点に立ち返れるのだと思います。
トイレの何にハマったんでしょうね?

白倉 正子さん:世界中を見渡すとトイレは大きな社会問題になっています。たいへん大きな問題であるにも関わらず、課題は多岐に渡るので、私はそれぞれの問題に対応する研究や事業が必要であると考えます。

そういう素朴な疑問や視点は、社会を動かす原動力になります。トイレ研究を貫いている私自身の存在価値は、何らかの意味があると思いたいものです。そんなわけでハマっちゃいました(笑)。

――トイレが好きというよりも、世界のトイレ事情に対する使命感が溢れ出ている感じですね。

白倉 正子さん:切り口がいっぱいありますね。ある時は「トイレ掃除」だったり、ある時は「ユニバーサルデザイン」、ある時は「観光対策」「し尿処理」という感じなので、私にとっては膨大に広いテーマです。
人生80年だとしても研究する時間がまったく足りないので、天国でも続けることになると思います(二人大笑)。

ちなみに、トイレというキーワードで仕事をしていると、いろいろな方と出会うことができます。例えば建築家から行政マン・主婦・外国人・芸能人まで…。トイレがきれいになることを嫌がる人は一人もいないので、人の役に立っているという手ごたえは、100%あります。
嫌われたり対立したり、敵をつくることもないという面白みも、トイレの仕事にはありますね。

――敵をつくることがないか・・・、国境線にきれいなトイレを並べたらいいかもしれませんね。国連が国境トイレをつくって運営したら、国連の株が少し上がるかもしれません・・・。
トイレが好きというよりも、きれいになることで清々しくなり誰かの役に立っている悦びを感じるということですね。

白倉 正子さん:例えば、先ほどお見せした資料の赤枠で囲んだ部分(下図)のように、

世の中が抱えるトイレの課題として、震災時のトイレ対策、障がい者の方のトイレ事情、そして世界のトイレの悲惨さへの対応…があります。

阪神淡路大震災や東日本大震災のような非常時には、急にトイレが使えなくなってしまいました。つまり日常の豊かな生活から突然、原始時代の生活に一変してしまうのです。すると、あちこちに屋外排泄をすることになってしまい、感染症につながったり、飲食を控える人がエコノミー症候群になったり、女性がレイプされてしまう事件が起きたりしました。

障がい者の方に関しては、外出しようと思っても街の中に障がい者用トイレが少ない場合、買い物も安心してできない上に、仕事に就くこともできない人さえいます。半径500m以内にトイレがないと、みなさん不安でしょうがない状態になりますからね。人生設計に深い関係性がトイレにはあるのに、多くの人は気づいていません。

世界のトイレ事情の悲惨さについては、世界中で子どもが毎日800人も死んでいるということをご存じでしょうか?さらに23億人が屋外で排泄しているという実態があります。

日本では温水洗浄トイレが当たり前になっているのに、この落差に大きなショックを受けました。

こんな人権的に基本的なことができない社会に、学生時代、怒りを覚えました。

――ご自身の中でトイレに対する問題意識が高まり続けているんですね。

白倉 正子さん: 高めているという面もありますね。こういうトイレ問題が意識されにくかった背景の一つに「トイレ問題の伝道師がいなかった」ことがあるのでしょう。いたとしても活動を十分に評価されていなかったと言えます。なんせ、トイレ問題は地味なので(大笑)。

とは言っても、トイレの話は、みんな大好きですよ。

例えば、小さな居酒屋に行った際に、同行した友人が店長に「この白倉さんって人は、世にも珍しいトイレ専門家なのよ」なんて伝えようものなら、他のテーブルのお客さんまで、トイレの話が伝播してしまい、気がつけば店中がトイレの話で盛り上がってしまうこともありました。
そして、その場で他のテーブルのお客さんにトイレのエピソードを聞かされたり、相談をされたこともあります。
つまり、トイレの話は、普段堂々と話しにくい分、一度フタを空けてしまうと、みんな堰を切ったように話したがりますね(二人大笑)。

――分かるような気がするなあ。

白倉 正子さん:ほとんどの人が、なんらかのトイレネタをもっているので、喋りたくてしょうがなくなるんですよ(大笑)。

例えば、中高年のおじさんが尿漏れの暴露をし始めたり、そうかと思えば、急にトイレ関連の法律の話をしなければならなかったりと、一気に国会答弁のような話になったりします。

そういうウンチクとか疑問とか想いとかを聞いているうちに「これ使えるな!」って思える情報に巡り合うこともあって、すかさず心にメモしておいて、いつか商品開発に生かそうと思ったりします。私はこれを「トイレマーケティング」と呼んでいます。ナマ情報は貴重ですからね。

そうかと思いきや、ある時には急にNHKから電話がきて、専門家としてニュースのコメントを求められたりすることもありますので、気が抜けません。常に最新情報に触れていなければなりません。

おかげさまで、トイレの話をすると誰とでも打ち解けて、すぐに友だちになれます(大笑)。心の壁がすっと下がるみたいな感じがします。

――日本のトイレは世界一きれいだと聞きます。

白倉 正子さん:海外から帰国した人はよく、「成田空港に着くと、トイレがきれいなので、ホッとしたよ…」とおっしゃいます。

例えば、ある日本人の女子大生が、カンボジアの民家でトイレに入ったら、お尻を拭く紙が無く、その代わりに水が入っている桶があり、自分の陰部を自分の手で洗うしかなかったので、びっくりしたなんてエピソードがありました。

また、昨年開催された東京五輪では、多くの海外選手が日本のトイレに感動したそうです。世界中を飛び回っているビジネスマンの知人も「日本のトイレは世界で最高レベルだ」と断言してくれました。だから間違いないと思います。

――数年前にJR東日本の研究所の方と話しをしていたら、駅のトイレの消臭をテーマに実用化研究をしていました。なかなか難しいようですね。

白倉 正子さん: それこそ消臭は、日本トイレ協会メンテナンス研究会のテーマそのものです。そもそもトイレはなぜ臭いのか?どうしたらなくなるのか?掃除の仕方や建築の在り方まで研究しなくてはなりません。とても奥が深いテーマです。

――突然話は変わりますが、トイレでオトコの立ちしょんを禁止したり取り締まる(笑)ケースが増えてきて、家にいても何ともかんともといった感じです。
オトコらしくとか言いづらくなってきている昨今、密かにオトコらしくありたいと思っている者にとっては、立ちしょん禁止は歴史的分岐点に立たされているようにも感じます(笑)。

白倉 正子さん:この写真を見てください。この便器は表面の泡がおしっこの跳ねを吸収してくれます。立ちしょんでも許してあげようというものです。泡の作用によって跳ねの着地点が変わります。便器のボウル状の内側で、跳ねが納まるというものです。

跳ねを吸収する泡が出るトイレ


でも世の奥様方からすれば、そんなところでオトコらしさを発揮しなくてもいいんじゃない?と感じるでしょうし、その前に「自分で掃除してよ!」と思っているでしょうね。

――話を変えますね(大笑)。
ところで、小さい頃は、どんなお子さんでしたか?

白倉 正子さん:「なぜ?どうして?」と質問が多い子どもだったようです。

――先ほどの写真はいつ頃の写真ですか?

白倉 正子さん: 高校時代ですね。自分の生きる道、つまり職業について悩み始めたのが高校時代だったので、その頃の写真を使っています。

実は、中学の頃に高校受験で悩んだんですよ。「志望校をどこにしたらいいのか?」分からなくて…。
周りの人たちに聞いても、案外目標が曖昧で…。なのに、どうして厳しい受験に立ち向かえるのか?が不思議でしょうがなかったです。だって人間は目標があるから馬力が出てくるし、結果も出せると思うからです。

でもその頃といえば、親たちも「とりあえず良い学校に行け」って感じで、目標をもつことは二の次って感じでした。
小さい頃は「大志を抱け」とか言っていたくせに、いざ夢を追いかけて起業しようとしたら、「良い会社に入れ」とか「女の子は良いお嫁さんになって、子育てに専念しろ」って言うんだもん。これって矛盾していると思いません(笑)??
特に女性は、夢をもつことや、そのためのキャリアプランをもつことが、しにくい時代でしたね。


とにかく、自分は何のために生きていて、何がしたのか?が分からず、もがいていたことが、私の起業の起点です。
そして「どうせなら新しいことをしたい!」と思い、それを応援してくれる大学(=多摩大学)を選びました。そんな思いが「トイレ研究家」につながった気がします。

高校1年の白倉さん(アイス片手に)

私が言っていることは、ごく普通のことだと思いますが、どうですか?自然でしょ?

なお、私の目標は、今でも「トイレ専門店を開業すること」です。名実ともに専門家による専門店にしたいと思っています。
でも、現実的にはなかなか辿り着けないものですね…(苦笑)。

20代後半から現在(40代後半)までは、はっきり言って子育てと仕事の両立で、余裕がありませんでした。ですが、来年には3人いる我が子の、最年少の子が高校生になるので、ぼちぼち始動したいなあと思っています。創業した22歳から計算すると、助走期間が長かったですよ。

だけど、オンリーワンを貫いた自社ブランドの構築期間だったと、割り切ることにしています。

36歳(2009年)の子育て中の白倉さん

――私も何をやりたいのか分からなかったですね。職業に当てはめられないというか、ある意味で何をやっても一緒じゃないかという気分でした。

白倉 正子さん:仕事・職業・人生ってニアイコールです。例えば、孫に「おばあちゃんってどんな人だった?」と聞かれた場合に、職業で人生を語られるパターンと、キャラクターで語られるパターンの2つに分かれると思うのですが、私は「職業者として語られたい」と思ったんですよね。
しかもそれが、前代未聞の面白い職業で、テレビとかに出たことがあるなら、孫たちにデカい顔ができるかな?と…(笑)。
そんな、社会に爪痕を残すことに挑戦する人生を歩みたかったです。

なお、自分で言うのは照れ臭いですが、私は小中高時代に、学級委員長や生徒会役員を、19回も任されました。それで自ずとリーダーシップや組織のマネジメントを体得していたのでしょう。
大学ではさらに、新しいものを生み出す面白さを味わいました。

これらが「自分を面白がる私」の自己プロデュースにつながったんだと思います。

だから起業で失敗しても「コンビニでバイトすればいいや。なんとかなるさ!やってみよう!」と腹がくくれたのでしょうね(大笑)。

――それは分かります(二人大笑)。

今日はトイレ談議に花が咲いて、話している言葉も「ウンチク」とか「溢れ出る」とか、何気に連想してしまう言葉が出ていました(笑)。
ビジネスの着想や生きる醍醐味についても、共感することが多いにあって楽しかったです。

ありがとうございました!


2005年 内閣府の展示


インタビューが終わろうとした時に突然、白倉さんが私に「今日の話はどうでしたか?」と質問されました。
少し驚いた私は、「率直に言って楽しかったです」と答えました。

日本ではビジネスで挑戦する人が少な過ぎるので、こういう人が増えたら日本は面白くなるだろうなと思いながら、私は白倉さんのお話をお聴きしていました。
アントレプレナーシップ(起業家精神)を貫き続けている人と、今日はまともに出会ってしまった感じです。ご自身は、起業家ではなく「創職者」(=新しい職業を作る人)と言いますが。

こういうこだわりというものは、自分は何者なのかを突きつめた先にあるものだと強く感じます。

退路を断って進む。
学生時代のお話をお聴きしていても、そんな覚悟をもって生きて来られた方なんだろうな。だからご自分を客観視した言い方になる。
そして、その覚悟が未だにある。

何故その覚悟を持ち続けられるのか。

多分、ごく自然に、自分自身を生き続けているからではないでしょうか。

真っすぐに、真っさらに生きている人。

白倉正子さんは、透き通るような心で、自分を生きることの大切さを伝えてくれる伝道師でした。


■白倉 正子さんのプロフィール

1973年群馬県生まれ(現在49歳)。92年多摩大学経営情報学部を入学。在学中に聞いた授業の話がきっかけで「トイレ専門家になる」と決意。
卒業後はトイレ専門企画会社「アントイレプランナー」を起業し、トイレ掃除の修行から始める。
トイレに関する、講演・執筆・研究などを行っている。
2012年TBS「マツコの知らない世界~トイレの世界」に出演。その様子がDVDで発売されている。
(一社)日本トイレ協会運営委員。世界トイレ協会(日本人唯一)。
3児の母。横浜市在住。夢はトイレの専門店を作ること。理念は「トイレから地球革命!」


女子トイレ研究家 白倉正子 公式サイト

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