長尾龍さんへのリレーインタビュー

アサヒサンクリーン株式会社 多摩西ブロック長の窪田友樹さんからのリレーインタビューは、株式会社ファイルフォックス八王子 代表取締役 長尾龍(りょう)さんです。

ファイルフォックスは、日本最高峰のFリーグを目指すフットサルクラブ。長尾さんは、そのクラブのオーナー、監督、選手の一人三役を兼務しながら精力的に活動されています。

『八王子にフットサルのトップチームを!』
2年前その夢を実現するために、長尾さんは一念発起して起業されました。実は、長尾さんご自身が元Fリーガー。だから今度はこのチームで絶対に夢を叶えたいと考え、様々な角度から人、企業・団体、行政を巻き込んでフットサルの面白さを伝え、ファンを増やし、チームとの距離感を縮めていこうと奔走されています。

一念岩をも通す。そんな気迫に満ちた長尾さんが描くキャンパスには、ファイルフォックスの選手や八王子のスポーツ文化がところ狭しと躍動していました。(聞き手:昆野)

ファイルフォックスの選手たちとファンの方々

――当面の目標は何ですか?

長尾龍さん:フットサルのFリーグに昇格することです。以前私もFリーグでプレーしていましたが、今度はファイルフォックスの選手たちと八王子から日本最高峰を目指しています。

――夢や目標がハッキリしているっていいですね!Fリーグに入るためには何をしなければなりませんか?

長尾龍さん:当面はチームの戦力強化、市民への認知などを含めた行政との関係性強化、資金確保の3つが不可欠です。

――これも明快ですね。行政との関係性強化とは、地元に根差したチームづくりが大切だということですか?

長尾龍さん:そうですね。地元八王子にホームアリーナを確保する必要があることと、何よりもチームの認知度を高め八王子の人たちに応援していただくことが最も大事なことです。そのためには、行政との連携が重要です。

――ファイルフォックスは、2年ほど前に府中から移転されたんですね。

長尾龍さん:はい。既に府中にはFリーグのクラブがあるし、ホームアリーナを確保できないという事情がありました。八王子に移転した理由は、私自身が八王子出身であり、八王子からFリーグを目指せるクラブをつくりたいという強い想いがあったためです。さらに八王子サッカー協会の方々とご縁があったことが引き金になりました。
その頃八王子にはFリーグを目指していたチームがありましたが、結果を出せなかったんです。ですからそのチームと合併することで、八王子サッカー協会にも歓迎されてとんとん拍子に話が進みました。

――八王子でホームアリーナを確保できたんですか?

長尾龍さん:まだ確保できていませんが、少しずつ八王子でプレーする頻度は高まっています。

――そうすると、会場を借りて練習や試合をされているんですか?

長尾龍さん:民間の施設を借りることも多々あります。

――おカネが掛りますね(笑)。

長尾龍さん:掛かりますねー、資金集めがたいへんです(苦笑)。私なりにFリーグへの道筋は描けているのですが、いざ参入しようとすると意外に簡単じゃないですね。まず試合を観に来てくれる人を集めるのが難しいし、フットサルの面白さを広めていくのは凄く難しいですね。
私自身、当然このクラブを何とかしたいと思っていますが、八王子を何とかしたいという気持ちも強くもっています。

――どのようにしたいんですか?

長尾龍さん:八王子出身のサッカー選手やFリーガーは結構いるんですが、八王子の中でそういうことがほとんど話題にならないんですよ。サッカー日本代表選手ですら、ほとんど知られていない状況です。まだまだスポーツに関して八王子はそういう街なので、選手たちは八王子から出て行ってしまいます。そこに歯止めを掛けたいんです。
八王子にトップチームができれば、選手たちは都心や町田に行かなくてもみんなここで一緒にやるはずです。八王子にトップチームがあったら、私も毎日2時間も掛けて小田原のベルマーレまで通うことはなかったですから(笑)。

湘南ベルマーレ時代(左が長尾さん)

――今、長尾さんはオーナー、監督、選手の三役。実際は広報や資金調達など四役も五役もこなされていますね。

長尾龍さん:やるのは全く苦ではないんですが、まだまだファイルフォックスの存在自体を知らない人が多く、フットサルをやっている人でさえ知らない人が多いので、そこを何とかしなければならないと思っています。
ファイルフォックスはこれまで何度も日本一になったチームなので、名前は知っているけど八王子に来たことは知られていない。「八王子に来たなら協力するよ!」という声が、ちょっとずつでも広がっていくようにしたいですね。移転して2年になりますが、今はまだそういう状況です(苦笑)。正直、サッカー協会がバックにいるので、パッと広がるものと期待していたんですが…、もっともっとやらなきゃと痛感しています。
ただ、チームを運営するためのマンパワーが絶対的に足りないので、資金を確保して人材を増やして行かなければなりません。本来、選手もサラリーをもらってフットサルができたらもっともっとやりたい人は増えるんですが、今は選手もそれぞれ本業をもってフットサルをしている状況で、私自身も他のビジネスの収入があるので続けていられるのが実状です。

――みんな好きだから集まっている、それが原点ですね!ところで他のビジネスって、どんなことですか?

長尾龍さん:「サルコン」を初めとしたイベント業です。

――何ですか、サルコンって?

長尾龍さん:いわゆる合コン・婚活のスポーツ合コン・スポーツ婚活バージョンです。「ベストパートナー」と言う事業名で、私のビジネスとして展開しています。

――ベストパートナー、面白そうですね!長尾さんは、面倒見がいいのか野心家なのかわからない方ですね(大笑)。でもそうやってご自分の夢や目標を叶えようとして、様々な手段を講じているということですね。結局、フットサルが好きだからやっている、好きだから集まっている。理屈なんてない、それってサイコーですね!
ファイルフォックスは全国タイトルを6回獲得し、2005年には三冠達成など華々しい活躍をしたチームですね。

長尾龍さん:そうなんです。だからFリーグができた時に、ファイルフォックスも手を挙げればFリーグに行けたんじゃないかと思いますが、その時はそれぞれ選手の事情があって、クラブチームとしてではなく選手各自で進む道を決めることになったんです。

――再びチームが活躍すれば街全体も盛り上がります。そういう意味でも行政のバックアップは欠かせませんね。

長尾龍さん:特に今年はオリンピック・パラリンピックイヤーですから、日本中の人たちがスポーツに感動し元気が出る年になると思います。オリパラに触発された人たちがフットサルにも目を向け足を運んでくれれば、絶対に感動してくれると思うしもっともっと応援してくれると思っています。
まずは会場に足を運んでもらうこと・・・。それがこんなに難しいとは思いませんでした(苦笑)。

萩生田さんと

――フットサルをやっている人たちのほとんどはサッカー経験者ですよね?子どもたちもサッカーからやり始めるのが一般的ですか?

長尾龍さん:日本ではそれが一般的でしたが、ブラジルでは全く違っています。フットサルをやっている子が12歳頃になって、フットサルを続けるかサッカーをするか進む道が別れるんです。
フットサルはサッカーよりも相手が迫って来る距離が近いので、瞬時に状況判断をしなければならず対応スピードはどんどん速くなっています。小さい頃からフットサルをやっていれば、サッカーに生かせる部分はかなりあると思います。

――フットサルをやる子どもたちをどうやって増やすか。大きなテーマですね!

長尾龍さん:最近は高校サッカーでも、帝京長岡高校や矢板中央高校などサッカーとフットサル両方でプレーしている選手がいてフットサルも強くなっています。両方やって上手くなるなら両方やればいいし、FリーガーになってもJリーガーになってもどちらでもハッピーじゃないですか(笑)。
最近、私たちも子どもたちと接する機会が多くなっています。それは試合の度に小学生が観に来てくれるようになったためで、試合後のフットサルクリニックには毎回50人程の小学生が参加してくれるようになりました。
これは八王子サッカー協会のバックアップによって、関東フットサルリーグを八王子で開催出来ていることが大きな要因かなと思っています。こういうことが選手たちにとっても凄くいい刺激になっていて、子どもたちとの関わりの中で選手たちに新たなプライドが芽生えてきていると感じています。

フットサルクリニックの後に

――長尾さんがサッカーを始めたのはいつ頃からですか?

長尾龍さん:小1ですね。高校までサッカーをやり、大学入学と同時にクラブチームでフットサルを始めました。

――プロを目指したのは?

長尾龍さん:Fリーグができた時からずっと目指していました。当たり前のように目指していました。

――今の子どもたちを見ていてどう思いますか?

長尾龍さん:技術的には上手くなっていますね。ただ日本の子どもたちは、全般的に腕白さやヤンチャさが足りないというか、現実主義の子どもが増えているような気がします。見ていてちょっと寂しいですね。
夢があるのかなあ、夢があっても諦めるのが早そうですよね。勉強もしなくちゃいけないけど、好きなことやりたいことをトコトンやってほしいなあ。最近、公園でボール蹴っている子を全然見かけないんですよね。ボール遊び禁止の公園が多いのでしょうがないかも知れないけど、子どもたちにとってホントにこれでいいのかなあと思ってしまいます。

――長尾さんとお話ししていると、ずっと子ども心を持ち続け、夢を追って生きて来られたんだなと感じます。子どもの健やかさを持ったまま大人になった長尾さんのお話しは、“日常にあるロマン”を感じさせてくれます。ところで中長期的な夢は何ですか?

長尾龍さん: 八王子にスポーツ文化を根付かせたいですね。フットサルに限らずサッカー、バスケ、野球などの地元チームを八王子市民みんなが応援し、地元チームが勝ったら喜び、負けたらダルいなといった調子になるような(笑)。居酒屋でもファイルフォックスの試合が中継され、みんなが当たり前のように観て応援している。そんな日が来たら、めっちゃ嬉しいです!!(眼がキラキラしています

――これまでもユーミンやファンキーモンキーベイビーズなど、八王子から多くの人材が輩出されていますが、だから八王子が盛り上がっているとはあまり感じないですね。仕掛け人がいないのかな。売れっ子が地元チームを紹介すれば、一気に認知度が高まり人材が集まって戦力強化にも繋がるでしょうね。もったいないですね!地域プロデューサーという仕掛け人がほしいですね・・・。

長尾龍さん:ポテンシャルは絶対あるし、みんな“八王子愛”はアツいですからね。

――素人の思い付きですが、フットサルをストリート系のスポーツとして馴染ませていけないものですかね?例えば八王子駅周辺をホコ天にして、「ああ、サルやってんなー」という感じになると面白いですね。

長尾龍さん:私は2回程ブラジルに行きましたが、ブラジルでは小さい子が空き地でフットッサルやろうよと集まって来る。大人も「オレは20歳までサンパウロでサッカーやっていて、ケガをしなきゃもっと上に行けたんだけどなあ」っていう人と飲み屋で同席したり、店の中でちょっとテーブルをずらしてボールを蹴り始めたりします。全然平気で蹴っちゃうし「ボール取ってみろよ」とか、凄く楽しいんですよね(笑)。ブラジルはそんな文化が根付いているところなんです。八王子をそういう文化が根付く街に変えて行けたらいいなあと思っています。

――なるほどねー。遊び心満タンな大人が多いって、日本とは全然違いますね!日本ではつまらない顔をした大人が多すぎです。子どもたちからすれば、迷惑この上ないって感じですね(笑)。

長尾龍さん:そのつまらない世代が低年齢化していると思います。つまらない顔をした子どもたちも増えていますから。

―――そういう面では長尾さんはバッチリですね(大笑)!

長尾龍さん:ずっと遊んで生きてるようなもんですねぇ(二人大笑)。

―――子ども心ってサイコーじゃないですか!幼稚や稚拙とは全く違った、みんなが楽しくなるような、どこか懐かしくて温かみがありますね。平和ってそういう心に宿るんじゃないのかなあ。
子どもたちの親を見ていてどう思いますか?

長尾龍さん:親も時代の流れには逆らえないんでしょうね。私と同じ世代にも子どもが小学生の親が増えていて、そんな話をしていると「そうだよね」とか言っているんですが、でも実際に行動する親はいませんからね。最近は小1からサッカーの英才教育をやらせている親も増えていて、どうなのかなって思いますね。

――子どもたちはいつも比べられています。子どもたち自身も、自分の存在価値を他の子どもと比べることで見出そうとします。狭い世界の中で安心材料を見つけたり劣等感を抱いたりして、いつも息苦しい状況に身を置いてしまいます。多くの大人もそうなんでしょうけど、だったら子どもたちが解放されるようにするのが大人だと思います。
ファイルフォックスで一緒にプレーしていた人たちは、どんな職業の方が多いんですか?

長尾龍さん:結構、教員や公務員がいたりしますよ。

――教員?公務員?

長尾龍さん:彼らの方が私より賢い生き方をしているんですよ。だから奥さんたちからはウケがいいんですよね(二人大笑)。でも結局、私よりもつまらない生き方をしていると思っています(笑)。

――(負けず嫌いやなあ)プライドありありですねー(笑)。仲間うちでも、長尾さんが一番リスキーな人生を歩んでいそうですね。

長尾龍さん:性分と言うんですかね(笑)。ファイルフォックスの代表になっていなければ、オレの家はもっとデカかっただろうなあとか思いますよね(二人大笑)。
でもやっていて面白いので、何でみんな面白いことやらないのかなって不思議に思います。そう言いながら私の妻は、賛成して応援してくれてはいますが、もっと安定してほしいと思っているでしょうねぇ(笑)。

――そこは、生きざまとは別問題ですね(笑)!

長尾龍さん:私が正社員になったのは27歳の頃で、それまではフリーターで凌ぎつつFリーガーを目指していました。やはり同じ境遇でやってきた人たちとは、今でもわかり合えるんです。若い人たちにも私たちがどんな境遇でやって来たのか伝えていますが、どうしても安定を求めてしまう人が多いですね。自分の道を選んで、どこまでも突き進むということができない。
以前は私に対しても、「あいつ、いつまでボール追っかけてるんだ?」と言っていた人はいると思うんですよね。だけど自分がやりたいことをトコトンやってやってやってやった結果、Fリーグに行って夢を叶え、その後自分の計画通りに働いて結婚して娘も産まれてきてくれて家も買えた。それって自分で決めた道であって、自分で切り拓いていくしかないと思うんですよね。誰かや何かのせいにして諦めてしまったら、自分を生きていることから逸脱していきます。誤魔化さず、自分に正直に生きていれば絶対面白いし、そういう人が増えれば世の中よくなると思うんですよ。

―――いいですね!人生の醍醐味を捨ててしまっている人が多過ぎですよね(笑)!
今日は、スッキリ爽快なお話しをありがとうございました。

 

“美意識”をもって生きている方なんだなあ。それが、真っ先に私が感じた印象でした。

どう生きるか。
長尾さんにとってそれは考えて得るものではなく、すでに潜在意識として存在しているものなので、生きる上でとても重要な判断や意思決定を瞬時にできる状況にあると感じます。感覚的にわかっている状態です。

長尾さんの夢はFリーガーになるという“個の夢”から、八王子のクラブチームをFリーグへ、さらに八王子にスポーツ文化をという“みんなの夢”へと変化し広がり始めました。
個を突き詰めることは全体に通じる。それを長尾さんはスポーツから学び、人生に生かしています。

いつか飛龍となって、“みんなの夢”を叶えてくれるんだろうなあ。

そんな長尾龍さんは、久しぶりに出会った男臭くて気骨のある人でした。

 

■長尾龍さんのプロフィール
1985年 東京都八王子市生まれ。小中高とサッカーに没頭し大学時代からフットサルの道へ。22歳から現在のファイルフォックスでプレー、2013シーズンはFリーグの湘南ベルマーレに所属。
その後ファイルフォックスへ復帰し、2018年にはファイルフォックスをFリーグへ参入させるため八王子へ拠点を移し活動中。“八王子からFリーグへ”をモットーに日々奮闘しています。

 

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