小宮雅也さんへのリレーインタビュー

私立ろう学校(特別支援学校)非常勤講師の前田健成さんからのリレーインタビューは、癒しスタイリストの小宮雅也さんです。

小宮さんのお仕事は、フィリピンで古来より伝わる伝統民間療法「ヒロット」です。
昔からフィリピンでは森羅万象に霊魂が宿り、それぞれの神を尊び嵩めるという、自然と神と人間との共存を大切にしてきたといいます。
日本に伝わる“八百万の神”という自然観、宗教観に近いものなのかも知れません。

私は「ヒロット」という言葉すら聞いたことがなかったのですが、小宮さんのお話しをお聞きしているうちに、何故こういうお仕事をされているのか少しずつわかってきました。

そこにはDNAを感じさせてくれる何かがありました。(聞き手:昆野)

 

――癒しスタイリストとはどのようなお仕事ですか?

小宮雅也さん:一言でいえば“ヒーリング”です。心身に働きかけて生命力・自己治癒力を引き出し、治癒・回復を促す行為です。
これまで私は様々なヒーリングを経験してきましたが、今行っているのは「ヒロット」というフィリピンの伝統的な民間療法です。

――ヒロット?初めて聞きますが、いい響きですね!どういうものですか?

小宮雅也さん:フィリンピンの人は昔から、病気やけがをした際、病院に行く前にヒロット施術者を訪れ、ココナッツオイルでマッサージを受けます。フィリピンでは、言わばファーストエイド的存在になっています。
ヒロットの始まりは5世紀頃といわれており、元々、霊力が高い人々によって霊的な癒しやヒーリングを施し、人々の苦しみを取り除いてきました。その一連の祈りや行為はヒロットと称され、現在まで脈々と口伝により受け継がれています。ヒロットは、筋肉、血管、神経に刺激を与えて活性化させるだけでなく、手から伝わるエネルギーによって神のヒーリングパワーを身体の隅々に巡らせ、本来の自然治癒力を回復させると考えられてきました。
今も現地フィリピンでは、体質改善や病気予防の為の民間医療、お産婆さんマッサージ、高級スパやサロンなどでのリラクゼーションとして人々に愛されています。

――どんな特徴があるんですか?

小宮雅也さん:ヒロットは「ピレイ(神経や血管が塞がった状態=つまり)」や「ラミグ(筋肉や関節が冷えた状態=冷え)」から人体を解放するものです。
フィリピンの治療の概念は、health&wellness(心身ともにバランスのとれた健康状態を目指す)、バランスと調和によって維持されるというものです。簡単に言うと冷えてバランスが崩れてしまった身体を改善し、本来の温かい状態に戻して体調を整えることを目的としています。
定期的にヒロットを受けることで、体調を整え、ストレスを緩和し、未病を防ぐ効果も期待できます。

ヒロットと言えばコレ!バナナリーフスキャニング(バナナの葉診断法)
バナナの葉で体の不調を特定します

フィリピン山岳地帯に伝わるフィリピン式フットマッサージ「ダグダガイ」

――何がきっかけでヒロットと出会ったんですか?

小宮雅也さん:ヒロットにたどり着くまでに様々な仕事との出会いがあり、まずハワイ伝統療法の“ロミロミ”との出会い、その後バリの“バリニーズ”という伝統療法と出会いました。一時期はロミロミとバリニーズ両方に携わっていました。
その後ヒロットと出会いましたが、母がフィリピン人なので今までとは異なる愛着があったのかも知れません。
また高校の時に盲目の按摩師に会って、目が見えないのになぜ人の身体の状態がわかるんだろうという体験をしたことが、リラクゼーションに興味をもったきっかけでした。

――今は都内でサロンを開いておられますが、男性によるリラクゼーションサロンというのは多いんですか?

小宮雅也さん:男性によるサロンはとても少なくて、さらにヒロットとなるとほとんどいません。ですから少しいかがわしいイメージがあったり、女性客の中には身構える方もいるので、そういうイメージを早く払拭したいと思っています。

――何歳の時に開業されたんですか?

小宮雅也さん:25歳の時です。開業当初は友人のマンションの一室を借りて始めましたが、「何とかなるでしょ」くらいの気構えで始めました。おカネはなかったんですが、つり銭さえ払えればいいかなという感じでしたね(笑)。

――なかなかの無鉄砲ぶりですね(大笑)。楽天的な性格はお母さん譲りなのかも知れませんが、お母さんのDNAを感じることはありますか?

小宮雅也さん:母は多くを語りませんが、どうも母方の家系はスピリチュアルな家系らしいんです。母も色々な呪文を知っているようですが、全く私に教えようとしません。

――なぜでしょう?

小宮雅也さん:ロクなことにならないと言っています(笑)。私の性格を知っているので。
ただ、そういう能力をもっている家系だとすれば、私もいつか開花する時が来るのではないかという期待感はありますね。

――親心ですかね?決して近道は教えないが、きっとこの子は人さまの役に立つ時が来ると信じておられるのでしょう!

小宮雅也さん:そうだといいですが、超アバウトな人なのでよくわかりません(笑)。

――やはり明るい方ですか?

小宮雅也さん:明るいです。フィリピン人女性はよく笑いよく喋るので、特に日本人男性の夫はおとなしい人が多いようです(笑)。うちの父もそうです。
ただフィリピンの親に共通していることは、日本では考えられないくらい教育に関して超厳しいということです。フィリピンの人たちは、とにかく目上の人を大切にして言葉遣いもとても丁寧です。悪口とかも言いません。

――そうなんですか。日本人が忘れかけている礼儀正しさが、フィリピンの人たちには残っているんですね。
これからヒロットを広めたいと思われますか?

小宮雅也さん:広めたいですね。昨年から日本にいる関係者が結構力を入れていて、昨年は『ツーリズムEXPOジャパン』というイベントに出展して、ヒロットを体験するブースを設けました。体験された方すべてが初めてでした。
今年も6月に上野で『フィリピンEXPO』が開催され、そこでも体験コーナーを設けました。最近はメディアにも取り上げられているので、今年はブレイクするんじゃないかと期待しています!

フィリピンフェスティバルにて。ヒロットセラピスト達と

――フィリピン大使館から声は掛かりませんか?

小宮雅也さん:掛かります。『ツーリズムEXPOジャパン』も大使館からの依頼でしたし、私の先生がフィリピン大使館と交流があるので声が掛かるようです。

ツーリズムEXPOジャパンのフィリピンブースにて

――大使館は自国の文化を伝えたいので、日本でヒロットを知ってもらうことはお互いにメリットがあると思います。大使館と連携してどんどんPRしてみたらいかがでしょう。
これからもヒロットを生業にされていくお考えですか?

小宮雅也さん:そのつもりです。今までいろんなことをやってきましたが、やっぱり色々なメニューがある蕎麦屋よりも蕎麦一本でやっているお店の方が美味しいじゃないですか。
“ヒロットと言えば小宮”と言われるようになりたいです。男性セラピストは小宮しかいない!という感じになれるといいですね(笑)。今はヒロット自体の知名度が低いので、私の名前が“ヒロト”で、そこからヒロットという名称になっていると勘違いされている人も多いんです(笑)。

――“ヒロット=小宮”になるために、どんなことをしていきたいですか?

小宮雅也さん:人間だけではなく動物に対しても関わっていきたいと考え勉強しています。ペットマッサージやペットアロマ、あるいはドッグソープという手作り石鹸の資格を取るための勉強をしています。

――色々な資格があるんですね。

小宮雅也さん:日本人って証明が好きじゃないですか(笑)。やはり資格があることで信用され、受け入れてもらいやすくなります。私自身も専門知識を得ることができるので、色々な場面で活かすことができます。

――子どもと接する機会はありますか?

小宮雅也さん:今までは少なかったんですが、今度フィリピン式『ベビー&キッズマッサージ』のイベントがあり、そこで子どもたちと触れ合う機会が生まれます。
そう言えばもう一つ力を入れたいのは、パパと子のスキンシップを増やしたいということです。そのためにヒロットを活かしてもらいたいと思っています。お母さんはベビーマッサージをしている人が多いので、パパが簡単にできるヒロットをお教えすることで、是非パパがお子さんと接する機会を増やしてほしいと思っています。

ベビー&キッズヒロット ワークショップにて

――とってもいいことですね!幼少期の子どもに、どんなに愛情を注いでも注ぎすぎるということはないと言いますからね。

小宮雅也さん:これが日本中に広がれば、親が子どもをケアすることができ、特に父親ができるようになれば子どもとのコミュニケーションが増え、少し心に余裕のある家族が増えていくのではないかと思っています。フィリピンの文化と同じように、日本においても子どもが親を敬える文化が根付いていくといいですね。

――是非続けてください!私は就職して初めて、会社員の子どもは親の働いている姿を見たことがないことを知り、そのことが社会問題の根源にあると思うようになりました。

小宮雅也さん:パパは朝早くから仕事に行き夜遅く帰宅する場合が多く子どもが起きている時間に会えないので、最近はパパになつかない赤ちゃんもいて、パパの顔がわからないのかなと思ってしまいます(笑)。
私も小さい頃から父と接する時間がほとんどなかったので、今は毎月一度実家に帰って父にヒロットをしてあげます。私から話し掛けないと話さないくらい父は寡黙な人なので、ヒロットでスキンシップを取ることがとても大切なひと時になっています
元々うちの家族は鑑賞しなさ過ぎで、母は授業参観に来ても5分で帰っていく人でした(笑)。

――それくらいでいいんじゃないですか(笑)。子どもを干渉し過ぎ、関わり過ぎのお母さんがとても多いと思います。関わり過ぎて“自己犠牲”を払っていると思わなければいいのですが。
そのうち子どもの方がしっかりしてきて、親が子離れできなくなるような気がします。

小宮雅也さん:ママ友同士の付き合いもあり、上手く付き合っていかないと子どもの友だち関係にも影響するとか心配が尽きないかも知れません。そういう部分はパパたちにはわからないでしょうね。

――わかりませんね(笑)。

小宮雅也さん:日本はとにかく比べたがる文化なのでしょう。でも人と比べるというのは辛いですよね。一生懸命やってダメだったらしょうがないと、比べなくなってから随分楽になりました。

――それはいつ頃からですか?

小宮雅也さん:つい最近です(笑)。先日、沖縄料理店のママさんと話していて、私が「どうしても嫉妬してしまうんだよね」と言ったら、「それはわざと見せてくれているんだよ」と言われたんです。そこから気持ちが変わりました。

――いいこと言いますね!

小宮雅也さん:人間死ぬまで勉強だと思っています。

――“明日死ぬと思って生きなさい。永遠に生きると思って学びなさい”。ガンジーの言葉のようです。
学校で学ぶことよりも、仕事を通して学ぶことがずっと多いですね。仕事が好きで楽しければ、さらに質の高い学びにつながり、人生のあり方や社会的課題解決へ目を向け行動することにもなります。働き方改革は国がルールをつくろうとしていますが、働き方の原点はやりたいこと好きなことをしているか、仕事が楽しいかということ。それは自分の生き様そのものなので、働き方は自分で決めるべきことだと思います。組織の中でのバランスは必要になるとは思いますが。
パタゴニアの創業者が書いた『社員をサーフィンに行かせよう』は、海辺の店にいる社員はいい波が来たらいつでも波に乗ろう。それがパタゴニア精神。つまりみんな好きだからこの仕事をしているということを、実感し続けてほしいということだと思います。
“日常を楽しく!”。『TEAM社会企業家』の根底の部分でもあります。

小宮雅也さん:気持ちに余裕がある人ほど人にやさしくできる。会社においても、社員のことを思っている会社ほど、社員は動きやすいでしょうね。

――効率や業績向上最優先の組織ほど、余裕がなく歪が生じています。そういう組織では疑心暗鬼になっている人が多いので、情報をオープンにしたがらずクローズすることで自分の存在価値を保持しようとします。
そういうケースでは、みなさんタコツボ状態で仕事をしているため相乗効果が生まれません。以前私は部下に対して、「あなたが3日掛かる仕事をもしかすると私は3秒でできるかも知れない。だから今何をしているのか教えてほしい」と言っていました。3秒は極端かも知れませんが、それに近いことは何度もありました。
これから何をしたいですか?

小宮雅也さん:ヒロットはフィリピンで生まれたものなので、私の中にはフィリピンをさらに豊かな国にしたいという想いがあります。未だにフィリピンではその日暮らしの人も多くて、大きなスラム街もあります。日本から4時間程度しか離れていない所なのに、何故こんなに差があるのか。フィリピンの人たちが安心して暮らせる国にしてあげたいなと思います。
私が稼いだおカネでスラム街を無くしたい。単におカネを寄付するのではなく、雇用を創出して生活の手助けをしたいですね。一流大学を出ても仕事が見つからない人もいますし、日本に出稼ぎに来て家政婦をしながら仕送りをしている母親もいます。家政婦の場合、フィリピンでは月1万円程度ですが、日本では16万円程度です。海外に出稼ぎに行かなくても、家族全員が一緒に暮らせるような国にしたいと思っています。それが私の夢です。

――DNAを感じますね!是非、心の豊かさを保ちながら、豊かな暮らしができるよう進めていただきたいと思います。
何となく、ご両親にお会いしてみたいですね!ありがとうございました。

 

このインタビューの原稿を作成していた朝に、朝刊の紙面から突然私の眼の中に『子どもニッコリ、契約パパ』という見出しが飛び込んできました。
それは、子ども好きの男性が登録する「お父さんバンク」というもので、本当のお父さんは単身赴任や仕事で運動会などにも参加できないため、臨時のお父さんを頼んで撮影や応援をしてもらうサービスのようです。無償のボランティアによるサービスで、子育てを手伝いたい人がその日限りのお父さんになってくれるらしいのです。

本質から逆行していると感じます。
世の中で起きている多くのことが、本質から外れて遠ざかって行ったり逆行したりしています。おカネ、時間、ルール、家族、対人関係、評価、普通・・・などに不安を掻き立てられ、自分らしさや人間性を見失いつつ逸脱していきます。
そしていつのまにか、誰かや何かのせいにして生きています。

記事を見て「何てこった!」と思いながら、私はこの小宮さんのインタビューのことを想い出していました。

“パパと子どものスキンシップ”で世の中が変わるかも知れません。
是非、実践し続けてほしいですね!

 

■小宮雅也さんのプロフィール

大手サロンでハワイアンロミロミセラピストとして働き、退職後は整体、操体法、タイ古式マッサージ、バリニーズ、スウェディッシュ、ホットストーン、メディカルアロマ、カラーセラピー、レイキヒーリング、ペットマッサージと色々と学ぶ。
フィリピンの血が流れている自分にとってフィリピンに携わる仕事がしたいと思い、フィリピンに民間伝統療法ヒロットというのがあることを知り学び今に至る。
現在、フィリピンフェスティバルやフィリピンEXPO、ツーリズムEXPOジャパンなどのフィリピンに携わる大きなイベントでヒロットを広める活動をしている。また、パパ・ママ向けのベビー&キッズヒロットマッサージのワークショップなどを定期的に開催。

 

・フィリピン伝統療法ヒロット 『マガンダ』HP

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