本当の自分

  1. 忘れていたという事に気が付いたんです。ど忘れと言った方が正しいのかもしれませんね。本当の自分をです。本来の自分をです。ある日、突然に気が付いたのではありません。徐々になんです、何年もかけて。
  2. アレ?なんか違うぞ。自分って、こうだったっけ?
    ウーン、どうも落ち着かんなあ。似た状況が前にもあったなような。
    鏡を見ているのか、鏡から見られているのか、ドギマギしながら妙に落ち着いている。
    自分はなんで自分なんだろう?アイツでもソイツでもないコイツって、ドイツなの?そうかと思えば、こんな事もありました。犬の散歩をしていた時の事です。ブロック塀に囲まれた空き地に入りました。住宅の跡地のような気配を残したそこは、膝や腰の丈の草がぼうぼうでした。犬の用を足している私の目は、ふと
    ブロック塀の一角にいきます。
    1メートルほど先のひとつのブロックを見つめます。
    私の胸の高さぐらいの塀の、一段下のそのブロックには、深緑色の苔が少しあります。数瞬という言葉があるといいのに!
    その数瞬後に思うんです。
    「O.Kなんだ」
    昼下がりなのに、もう一回夜が明けた明るさでした、まわりが。
  3. 彼女のお陰かもしれません。というのは、数日後の散歩中に再び、今度は感じたんです。「すべてO.Kだ」と。
    彼女の名前はボニー、スコッチテリア6才。横から見る彼女の顔が好きでした。孤高なる風貌をしていました。後にも先にも、「O.K」という感覚を持ったのは、この二度だけでした。二度目は、路地に面した生垣の葉をながめている時でした。

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